2006年3月号

 先日、「平和を創り出す」をテーマに職員研修を行いました。第二次世界大戦の際の沖縄戦のこと、それ以来続いている基地問題、そして現在沖縄と日本が直面している課題などを学びながら、平和を創り出すために私たちが何をすべきなのか、私たちの果たす役割は何なのかを考えあいました。

 ちょうど一ヶ月前、園内から「武器」を取り除こうという試みを始めました。子ども、特に男児はヒーロー物あるいは戦隊物と言われるテレビ番組の影響や、本能的な強さへの憧れからか、武器というものに対して「カッコいい」という思いを抱き、遊びの中に剣や鉄砲の類を取り入れます。もちろん、園のおもちゃに剣や鉄砲はありません。でも、ブロックや紙を使ってそれらを作り、あるいは見立てて遊ぶのです。

 しかし、武器というものは、相手を傷つけるためにあります。ですから、それらを用いて遊ぶのを容認するなら、それは私たちの保育方針と矛盾する結果になります。たとえそれが「ごっこ遊び」だとしてもです。

 ヒーロー物、戦隊物というものの根底にあるのは勧善懲悪の思想です。倫理的には、善を愛し、悪を憎むという考え方を持つのは良いことです。しかし、「自分が考える善」が絶対化され、そこになじまない「悪」は滅ぼさねばならないという自己絶対化と懲罰思想は、危険な方向に向かいかねません。勧善懲悪には、悪が悔い改めて善に変わるという前提がないからです。

 私たちは、私たちに一番大切なのは愛であると確信します。自分のことだけでなく、隣人への思いやり、助け合い、支え合う心を一人ひとりが育むことで、かけがえのない命を大切にすることができると信じます。

 平和は、一人だけで創れるものではありません。みんながそうした思いを大切にすることが必要です。そのために、まだ不完全ではありますが、子どもたちに愛する喜び、愛される喜びを伝え、それをみんなで分かち合う保育を目指します。