子どもの育ちの重要な要素に、「真似」があります。子どもは大人たちや友だちなど、周りの人たちのすることや話すことを真似しながら、自分の中に取り入れていくのです。当然、一番身近にいる親の影響を大きく受けるのは言うまでもありません。
いい例が言語です。日本人に生まれたからといって日本語を話すわけではありません。移民した人の子どもたちは、3代目くらいにもなると母国語を理解しなくなります。母国語を話す環境が少なくなるからです。どっから見ても欧米人なのに、英語を話せずに日本語しか理解しない人に出会ったこともあります。ずっと日本で暮らし、両親も日本語を話すのでそうなりました。
余談になりますが、このことを利用して教材を売り込もうとする業者がいます。「小さい頃から英語を聞かせるのがいい」というような売り文句。残念ながら現実はそう簡単ではありません。家庭でみんなが英語を話しているのならともかく、1日30分決まったテープを聴いたところでどうにもなりません。
先日、食事に行った時のことです。近くに座った家族連れのお母さんが小さな子どもたちに向かって「早く食えよ!」「馬鹿やろう」という言葉を連発していました。決して悪意があるようには見えなかったのが慰めですが、あまりに乱暴なので「ひいて」しまいました。
そういう言葉を聞いて育てば、そういう言葉を使うようになってしまいます。園でも「バカ!」「むかつく!」「あっち行け!」などの言葉が子どもたちの中から出てきます。他にも友だちを威嚇するような態度、感情をむき出しにして話したり乱暴したりする場面もあります。
その子なりの性格にもよりますし、友だちを見て真似することもありますが、たいていは周囲の大人たちが気をつけることで十分改善できることなのです。
まずは、各ご家庭で気をつけてみてください。叱る時にも、感情的にならずに丁寧にさとすよう心がけてください。子は親の鏡なのですから、子どもたちがいいことを真似するように。