2005年5月号

 「テレビやビデオに長時間さらされている子どもたちは、脳の前頭前野の発達が著しく遅れ、精神的な成長ばかりではなく、肉体とのバランスも極めて悪くなる」という調査報告を聞きました。

 簡単に言うと、テレビやビデオを観ていると、情報を受け取るだけで、自分から働きかけることがないので、想像するということや、自分以外の人や物と関わることができなくなるというのです。そのため、言葉の発達が遅れたり、我慢ができず度の過ぎるわがままになったり、自分の思いを押し通すために暴力的になったりしてしまいます。

 さらに、脳が働きにくくなるので、運動能力が低下します。例えば、走り幅跳びという競技がありますが、簡単なようでいてこれは極めて高度な運動だそうで、テレビやビデオで発達の遅れた子どもは、脳と体の連動が鈍くなるため、上手にジャンプできなくなるのだそうです。

 これらの調査結果を受けて、福岡で「ノーテレビデー」という運動が起こりました。1週間に一度、テレビやビデオをいっさい観ない日を作ろうというものです。

 反対意見がたくさん出ましたが、それらはすべて“大人の都合”によるものでした。チャレンジした園や学校、その家庭では、子どもたちは意外と平気で、苦労したのは親(特に父親)だったそうです。しかし、その効果は絶大で、他のおもちゃで一緒に遊んだり、トランプをしたりしながら、子どもと親がじっくり関わることができ、その結果、子どもたちも他者との関係性を上手に作れるようになり、それだけでなく想像や創造の力も増していったということです。中には、自閉傾向を疑われていた子どもが、テレビを消してわずか1ヶ月で回復したという報告もありました。今では、九州を中心に全国にこの運動が広まっています。

 この報告を聞き思ったのは、子どもとしっかり関わることがいかに大切かということです。テレビやビデオ、テレビゲームに子守をさせていませんか?その方が楽ではありますが、その代償はあまりにも大きいのです。どうでしょう、1週間に一度、テレビを消してみませんか?