2003年9月号
「いっぱい絵を描いてこよう」そう思って、色鉛筆とソフトパステルと新しく買った水彩絵の具セット、それに絵手紙用ハガキ40枚とスケッチブック3冊をバックに詰め込みました。
グアムを経由して16時間、小さな島々からなるミクロネシア連邦の首府パリキールがあるポナペ(ポンペイ)島は、年間降雨量6000ミリを越える高温多湿な気候で、別名パーム・アイランドと言われるくらいヤシの木が多く、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パンの木などがあちこちに自生しています。スペイン、ドイツ、米国、日本等に統治され、ちょっとしたきっかけでキリスト教の島になりましたが、それでも古来から伝わるナンマルキ(酋長)を頂点とした階級社会や風習は今も変わりません。そんな南の島にボランティア&研修で行って来ました。
座っているだけでも汗がにじみ出てくるのに、ハンマーなんぞ振り回した日には「おごったおごった!」いっちょ前に地下足袋履いて、腰には釘袋をさげ、ハンマーやらドリルやらコテやらハケやらを握りしめた老若男女のにわか大工たちが、何十リットルもの汗を流しながら体得した左官、天井張り、ペンキ塗りの技術は、きっと日本ではほとんど通用しないでしょう。でも、「園舎増築は自分たちでするぞ!」「オー!」と、その気になって夢を語り合えるようになったのは、チャレンジすることの楽しさ、支え合うことの喜び、そして一歩を踏み出せる勇気を自らのうちに確認できたからでしょう。
もう一つ確認できたこと、それは子どもたちは世界中みんな同じなんじゃないかってことです。確かに、たくましさという点において、ポナペの子どもと日本の子どもは比較になりません。でも、園に帰ってきた時、「わー!園長マンだ!」「毎日お祈りしてたんだよ!」と叫びながら次々に飛びついてくる子どもたちを受け止めながら、「ここにもいるじゃない、目を輝かせてる子どもたちが!」と改めて思ったのです。
スケッチブックは白いまま持って帰ってきていました。やれやれ、と思いつつも、今はそこに描かれたであろう幻の名作(?)を心の中で楽しんでいます。