2003年8月号

 ぶらり入った本屋さんで目に留まった絵本『まほうの夏』(藤原一枝・はたこうしろう作)新潟県の課題図書の中の一冊です。

 うだるような暑さの中、プールと家を往復する小学生らしき兄弟の夏休み。そこへ田舎のおじいちゃんからハガキが来て、二人は田舎に行くことに。

 田舎で待っていたのは真っ黒に日焼けした地元の子たち、虫とり、木登り、川遊び、魚釣り、青い空、白い雲、etc.ひとまわりもふたまわりも成長し、たくましくなって兄弟は田舎を後にするのでした。

 宮城県の小さな町で暮らしていた私のところに、東京の従兄弟たちや、かかりつけのお医者さんのお孫さんが遊びに来た時の様子は、まるでこの絵本のようで、だからとっても懐かしいような、うれしいような、そんな気持ちになりました。

 ザリガニは買うものだと思っていた子たちに、バケツいっぱいザリガニを釣らせてあげられるのは大いに自慢でした。歩いて魚釣りに行けるのも、デパートの屋上ではなく林の中にクワガタを捕まえに行くのも田舎の特権だということが、都会の子の喜びようを見てわかりました。

 逆に、従兄弟が帰る時に今度は私が東京に出ていった時のことも覚えています。田舎ではまだ流行の兆しもなかったスーパーカーショーを見たり、巨大な遊園地の乗り物で目を回したり、“ハムスター”なる小動物をお土産にもらったり・・・。

 田舎と都会とどちらがいいか?なんて野暮な比較をしようとは思っていません。新しい世界を見て、体験して、そこからいろんなものを吸収することができるのは、私たち人間に与えられた喜びだと、あらためて思っているのです。「井の中のかわず、大海を知らず(井戸の中にいるカエルは、外に何があるのか知らない)」というのは決して悪いことではありませんが、一歩踏み出せば可能性がグンと広がるよ、ということです。だから、園では子どもたちにいろんな経験をさせ、またそこから発する興味を広げてあげたいと思っています。