2001年9月号
涼しい風が吹く季節になりました。子どもたちの夏の思い出に耳を傾けながら、ひとまわりもふたまわりも成長したその姿を喜んでいます。
先日とある研修会で他文化共生ということについて学びました。今私たちの国にはたくさんの在日外国人とその家族が暮らしています。近畿6府県の保育園で実施したアンケートでは、日本人とのハーフを含め、実に37カ国の子どもたちが園生活を送っているとのことでした。これは、37の異なる文化がそこにあることを意味します。
そのような中で、私たちはともすると自分たちの文化、すなわち日本の文化を押しつけてしまいがちです。例えば、食事の時立て膝をする習慣の国があります。日本では「お行儀の悪いこと」として否定されます。逆のケースで考えれば、日本人はおそばを食べる時、麺をすすって食べます。それが欧米諸国では「お行儀の悪いこと」として否定されます。こうしたことが、日本の中では日本の文化や習慣になじまないものを排除するという形で行われるのです。
しかし、一人一人の子どもの背景にはそれぞれ異なった文化や生活習慣があり、それを大切にすることは人間にとってとても大切なことです。特に子どもたちにとって自分の文化を学びつつそれを大切にすることは、自分が何者であるかを自覚し、私が私であることを確認するアイデンティティーの形成に必要不可欠なことなのです。
教育という言葉は、読んで字のごとく教え育てることですが、教えるということが、単なる押しつけになってはいないかと反省します。一人一人の子どもにそれぞれの文化や生活習慣があり、それぞれが異なる豊かな賜物と個性を持っています。その全てを理解したり受け入れることは本当に難しいことではありますが、子どもたちが自信と喜びをもって生き生きと世の歩みを送ることができるよう、その努力を惜しまず、共に育ち合う“共育”を実践していきたいとの思いを新たにしています。