2001年8月号

 照りつける太陽の恵みの元、子どもたちはほぼ毎日園舎屋上でプール遊びを楽しんでいます。プール遊びをはじめてわずか1ヶ月の間に、水を怖がらなくなるとか、バタ足ができるようになるなど、その成長に目を細めています。逆に、水が苦手らしくプール遊びを好まない子どももいます。苦手を克服することも必要なのでしょうが、子どもが発する「NO!」の声も真剣に受け止め、その個性を大切にしたいと思っています。

 8月。私たちの国では世界で初めての原子爆弾を広島と長崎で経験し、そして太平洋戦争に敗戦しました。今から56年前のことです。私の前任地広島は、世界初の被爆地として、この季節は反戦・反核の思いを特に強くアピールしていました。

 原爆の恐ろしさ、悲惨さは筆舌に尽くしがたいものです。建物や人間はもちろん、辺り一面の草木も一瞬して灰と化してしまいました。あまりの高温に屋根瓦が沸騰し、ビンはグニャグニャに変形しました。中身のご飯ごと炭化して真っ黒になった弁当箱は原爆資料館の中でも有名な“証言者”です。20万人と言われる犠牲者の中に、たくさんの子どもたちがいたことは言うまでもありません。

 そうした事実を、被爆者の生の証言に耳を傾けて教えられる時、戦争を知らない私のような世代でも、平和への思いを新たにさせられるものです。

 平和は、黙っていて与えられるものではありません。争いのあるところではそれを解決する努力が、平和な世の中では争いを避ける努力が必要です。今私たちのもとにある平和は、先人たちの、まさに血と汗によって培われたものであり、私たちはその思い、そして平和を願う祈りをしっかり受け継ぎ、もてる知恵と力とを十分に用いて、この平和をより豊かで永遠のものとしていかねばならないと思うのです。そして、平和という何にも代え難い財産を、子どもたちにしっかり継承し、子どもたちが戦争に対してハッキリ声を出して「NO!」言えるように、共に育ち合いたいと思うのです。