2003年1月号

 新年おめでとうございます。新しく歩みはじめたこの1年も、神様のお守りとお導きのうちに子どもたちが健やかに成長し、家庭でも幼児園でも元気に明るく過ごすことができますようお祈りいたします。

 新年早々、なかなか刺激的な大雪が降っています。近所の方々も「これだけ降るのは久しぶりだ」と話していました。雪かきはしんどいのですが、一方では“話の種”が増えたと嬉しがってる部分もなきにしもあらず。

 ただ、これだけの大雪だと事故や災害なども増えますし、生活の様々な場面に支障をきたすので、あまり歓迎できるものではありません。

 そんな大雪が降り続く景色を眺めながら、かつてテレビで見た飛行機墜落現場での救助の様子を思い出していました。

 米国ニューヨーク市マンハッタンの横を流れるハドソン川に旅客機が墜落し、乗客が凍てつく川に放り出されました。ヘリコプターが生存者を一人ずつ救助していくのですが、ある男性が自分のところにおろされた避難バシゴを近くでおぼれそうになっている人に譲ったのです。半分凍っているような川の中ですから、体力があっても長くは持ちません。だから、救助のハシゴが自分のところに下ろされるのは本当にラッキーなことですし、それを見逃すことは死を意味しました。なのに、この男性はハシゴを隣人に譲ったのです。

 ヘリは大急ぎで戻ってきました。もちろん、自分の命をかけて見知らぬ隣人を助けたこの男性を救うために、です。ところが、男性はまたも別の隣人にチャンスを譲ったのです。そして、ヘリが三たび現場に戻ってきた時には、男性の姿はありませんでした。

 自分のためにではなく、隣人のために捧げる愛を「アガペー」と言い、人間の感情や肉体的な意味での愛と区別されます。自分中心になりがちな今の世の中で、自分を捧げることの尊さと喜びは、ともすればくだらないこと、損なこととして切り捨てられてしまいます。でも、本物の愛は圧倒的な輝きを放ちながら人々の心を揺り動かすでしょう。

 雪を見ながら、足りないながらも心にとめて努力したい、と思いました。