2003年2月号

 自分が保育園や幼稚園に通っていた頃の、特に時間の流れ方について思い出せますか?「子どもの時間の流れは遅く、大人は早い」という説は、とりあえず私には当てはまります。早く兄や姉のように小学校に行きたいのに、「ぼくはまだ年少だ」とか、「これだけがんばってきたのに、まだ年中だ」と時々考えていました。それに対し今では、「おい〜、もう金曜日やぞ〜」という具合に、1週間の早いこと早いこと。

 小さな子どもにとって、日々の生活は新しい発見の連続です。目、耳、鼻、口、皮膚、いろんなところから新しい情報が次から次へと入ってきて、それらを吸収していきます。別の言い方をするなら、“充実した時間”を過ごしているのです。充実した時間を過ごすということは、経過した時間に対して内容の濃い体験をしたということです。

 これに対して大人の毎日は、通常子どもたちほど刺激的なものではありません。与えられた仕事や作業をこなし、家事や子どもの世話に追われ、特に新たな発見や驚きもなく、「いつものように過ごした」という毎日になりがちです。気がつくと1日が終わり、1週間が過ぎ、季節がかわり、そして1年が経ってしまうのです。

 これです。この差なのです。子どもたちは日々新しい経験を通して、その能力の限りこれから生きていく上で必要な知恵と力を身につけていっているのです。時間に追われるのではなく、時間内で最大限の経験をしているのです。これが時間の流れ方という感覚に差を作っているのです。見方を変えれば、充実している時は、大人もゆったりした大きな時の流れを感じられるのです。

 気がつくと、自分のペースに子どもを巻き込もうとしていることが少なからずあります。もう少し、子どもたちのために自分の時間を割き、子どもの感覚を思い出してみたいものです。その努力は、必ず報われるのですから。