2002年9月号

 夏を越えると、子どもたちはひとまわり成長する、と言われます。夏休みを利用して様々な経験をするからでしょうし、夏という開放的な季節に、自分の中のいろんな殻を破って脱皮(?)するチャレンジ精神が生まれたり、またそのチャンスが多く与えられるからではないかと思ったりします。確かに子どもたちは夏を越えると大きく成長するのです。

 子どもは、実際に体験、経験することで人間としての引き出しを増やしていきます。知恵、知識、感覚、力、それに感情までも、体験、経験することで自らの内に蓄えていきます。

 おとなと違い、引き出しのまだまだ少ない子どもにとっては、日常生活でさえ、それらの引き出しを増やすチャンスにあふれています。ですから、夏休みなどはその何倍ものチャンスがあり、一気に引き出しを増やし、保育者たちを驚かせてくれるわけです。

 子どもたちは、「何をしたか」ということを、一生懸命話してくれます。たとえば、「海に行ったら、波がドカーンと顔に当たった」「花火がおもしろかった」「温泉に行ったら、お風呂に滑り台があった。うちもあんなお風呂だといいのにな〜」という具合に。子どもたちにとって「何をしたか」は、自分だけの貴重な宝なのです。

 実は、おとなも「何をしたか」ということを思い起こすことは大切なことです。肉体的な部分以外は成長し続けることができるわけで、引き出しが増えたというようなことはもちろん、仕事や子育てにどれだけがんばったとか、そういうプラス評価を自分自身にしてあげることで、おとなも成長するでしょう。

 ただ、同時に「何をしなかったか?」ということも思い起こしたいところです。一見するとマイナス思考のようにも感じられますが、自分に足りなかった部分を見つめ、それに気づくことができれば、その欠けを補う術をみつけられるのがおとなです。だから、「何をしたか」と同時に、「何をしなかったのか」ということも思い起こしたいのです。

 秋になれば、子どもたちは夏とはまた違った経験をし、そしてその経験を話してくれるでしょう。その話に耳を傾けながら、成長の喜びを共有したいですね。