2002年10月号

 先日「一筆啓上 日本一短い母への手紙」と、同じく「父への手紙」という本を大変興味深く読んだのですが、その中でも一番記憶に残ったのは高校生くらいの子が書いたこんな手紙でした。「お父さん、言いたいことがあるならハッキリ言って!お母さん、言いたいことをそのまま言うな!」

 微妙〜ですね。子どもが求めるような加減がいつもできるならそれに越したことはありませんが、我が子と言えども自分とは別の人格を持つ一人の人間ですから、その全てを知ることはできません。だいたい、親もまた一人の人間ですから、子どもに対して言いたいことは山ほどあるのです。

 ただ、親は子どもを育てるという大きな責任があり、そこが子どもと違うところです。手紙のお母さんのように、言いたいことを言いたいだけ言っていたのでは、子どもはまいってしまうでしょう。まして、幼い子どもならなおさらです。

 言葉は、話し手の気遣い一つで印象がガラリと変わるものです。例えば、「デブ」と言うより「ふくよか」、「痩せっぽち」と言うより「スレンダー」、「のろま」と言うより「余裕がある」、「おせっかい」と言うより「気が利く」と言った方が、少なくとも聞き手には好ましい印象を持ってもらえます。

 子どもも大人も、ほめられるとちょっと恥ずかしいけどテンションがあがります。すると会話が弾んだり、もっとがんばってみようかな、という気になるものです。逆にけなされたり、叱られたりすると萎縮して、様子をうかがうようになったりするのです。

 何でもかんでも、いつでもどこでも、相手をほめるというのは難しいことです。それが好ましいと言われても、なかなかそうすることが出来ない自分がいます。でも、「今投げかけた言葉は適切だったかな?」というふうに、せめて自分の言葉を省みることだけはしなければいけないと思っています。

 とかなんとか言ったって、子どもとたくさん会話する時間を作ることが一番大切なんですよね!