2002年5月号

 新しい環境にも少しずつ慣れ、園内には元気な子どもたちの声が響き渡っています。まだまだとまどいや不安の中にある子どもも、もうすぐ“自分”を出せるようになるでしょう。その1日1日の成長を楽しみにしています。

 『僕を探して(シルヴァ・スタイン著』という絵本があります。まん丸からひとかけらのケーキを切り取ったような形の“僕”が、足りないかけらを探して旅に出るという物語です。

 “僕”はまん丸ではないので上手に転がることができません。でも、ゆっくり転がるおかげで、お花の香りをかいだり、ミミズと話をしたり、歌を歌ったりしながら自分探しの旅を続けます。

 ある時、“僕”はかけらを見つけます。ところが、口にはめてみるとちょっと小さかったようです。“僕”は次々とかけらを見つけては自分にはめこみました。しかし、あるものは大きすぎ、あるものは尖りすぎ、またあるものは強くくわえすぎたために壊れたりしました。

 そしてある日とうとうぴったりのかけらに出会いました。はめてみると、本当にぴったり、“僕”は大喜びで転がり始めました。ところが・・・。

 まん丸になった“僕”は転がりすぎたのです。以前のようにお花の香りをかいだり、ミミズと話をしたりすることができません。口にかけらをくわえているので、歌も歌えなくなってしまいました。

 そこで“僕”はかけらをそっとおろし、「なるほど、つまりそういうわけだったのか」とつぶやいて、再び自分探しの旅に出ていくのでした。

 子育ても保育も、試行錯誤の連続です。絶対や完璧というものがなく、その代わり学びとチャレンジがあるのです。ともすると、おごり高ぶりに支配され、謙虚な姿勢で自らを省みる姿勢を失いがちになりますが、子どもたちと共に、自らも神様に成長させてもらっていることを思い起こしたいものです。そのためにも、安易に自己完結するのではなく、常にモアベターな自分へと成長する向上心を忘れたくありません。