91)十日町市中魚沼郡医師会便り

昨年4月から十日町市中魚沼郡医師会の広報担当理事に任命され医師会の広報活動を引き受けております。今回は当医師会についてご紹介します。会員数は約47名で開業医の他に病院勤務医も入会しています。通常診療業務の他に市からの依頼により保健(各地区講演会等)、福祉(介護認定審査会等)、衛生(健康福祉事務所:旧保健所からの依頼等)業務や休日診療、学校医、予防注射など多くの仕事があり他にも肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌の各検診業務、産業保険センターからの依頼による各事業所の産業医活動、また県医師会、日本医師会との連絡、会議など過密な日々が続きます。このたび医師会ホームページを立ち上げました。また我が「本町クリニック」のホームページも1996年から立ち上がっていますので是非ご利用下さい。(030305)

92)SARS(重症急性呼吸器症候群)
イラク戦争(対戦相手の名がない不思議な戦争)がまさに勃発しようとする矢先、平成15年3月17日の新聞に「原因不明の肺炎拡大」のニュースが飛び込んできました。中国や香港、ベトナム等の東南アジアを中心にオーストラリアやカナダにまで飛び火してあっという間に世界的大流行(パンデミック)を来たしそうな勢いです。コロナウイルス(一般的な風邪ウイルス)の新種とみられ今のところ治療法もなく死亡率も高くWHO(世界保険機構)では香港、広東への渡航自粛勧告を出しました。WHOが渡航自粛勧告を発令したのは史上初のことです。これは対岸の火事ではありません。日本でも娘の勤務している横浜の大学病院に患者が出たようです。君子危うきに近寄らず。特効薬がない限り海外旅行は自粛したほうが無難です。
93)パラサイト症候群

最近は学校を卒業してからもこれといった目標もなく結婚もせず仕事もしないで家でぶらぶらしていて親に養ってもらっている若者を「パラサイト症候群」と呼んでいます。文字通りの「パラサイト」の意味は「寄生虫」のことです。戦後すぐは回虫、ぎょう虫、鉤虫(十二指腸虫)が三大寄生虫でしたが近年の海外旅行ブームによってマラリアや赤痢アメーバ、またゲテモノ食いブームによりドジョウ(顎口虫)やサワガニのおどり食い、熊肉(旋毛虫)やヘビ、カエル(マンソン裂頭条虫)などの寄生虫も復活の兆しを見せています。またペットブームによって犬や猫の糞に混じった回虫の虫卵が人体に入り特に眼内に強い炎症を起こしてくることがあります。かわいいからとペットとキスなどしないで下さい。(030515)

94)たそがれ清兵衛・死生観
シネマトーク主催の映画「たそがれ清兵衛」を観た。山田洋次監督といえば「寅さん」シリーズや「学校」シリーズで現代を描かせたら右に出る者がないほどの人情の機微に迫る名監督であるが今度は初の時代劇に精魂を傾けた。江戸末期、山形の片田舎の貧しい武士の生活の中に規律と家族愛を絡ませながらしかし武士道という名のもとに生死の極めを尽くした強靱な魂。決闘前夜、刀の目釘を抜いて柄をはずし静かに刀を研ぐ姿をじっと見守る娘の姿。明日は死ぬと覚悟した武士の死生観のすごさ。忘れられぬ名場面である。真田広之が淡々と名演技。宮沢りえがつやを添え(最高)、さらに決闘場面は自然光の薄暗い中での壮絶な死闘。黒沢明監督をしのぐリアリティに圧倒された。人間必ず死なねばならない。清兵衛のように潔く死に望みたいものだ。(030605)
95)生まれいずる悩み
魚沼病院勤務中のある日の当直の深夜に救急車が入りました。村上、新宿間を走る夜行列車「ムーンライト号」が停車予定外の小千谷駅で緊急停車して七転八倒する乗客を連れてきたのです。尿管結石発作と診断して入院、鎮痛剤で治療したら翌日はけろっとして帰っていきました。この苦しみを自分が味わうことになろうとは。6月17日未明突然の右側腹部痛で起こされました。どんな体位をとっても痛みは取れずまさに七転八倒の苦しみです。坐薬を入れて一時をしのぎクリニックへ行って痛み止めを打ってもらい点滴をしながらの診察となりました。その夜は医師会の勉強会も欠席しひたすら寝ました。激しい痛みは取れたものの爆弾(石)はまだ尿管にあり。その2日後にまた激しい痛みに襲われました。(続く)