80)花粉症(1)
「ウサギ追いし、かの山」と童謡にも親しまれ、たきぎ拾いやクルミ、栗拾い、春の山菜取りや秋のきのこ取りなど生活に密着し、豊かな実を付けるブナやならの木などの茂る雑木林は小鳥や「隣のトトロ」や小動物に絶好のすみかを提供してくれた「里山」として貴重な存在でした。しかし戦後の林業政策の要として整備され雑木林がスギ植林の山に変わってしまったその日から日本の山にはトトロも小生物も住めなくなり、また40年が過ぎた今、公称1300万人(実際2000万人)とも言われる患者さんがスギ花粉症で苦しむ様になりました。、花粉シーズンの1月下旬から5月の中旬まで多くの患者さんが鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目の痒み、流涙を訴え、頭もぼーっとして仕事にならずどんな美男、美女もぐじゃぐじゃになってしまいます。治療費、薬代、労働損失などを合わせた医療経済的損失は年間2860億円にも上ります。ちょうど入学試験、予算策定時期、決算、納税時期など神経を使う時期と重なり損失額はさらに上乗せ状況です。(020415)
81)笑うカイチュウ
「笑うカイチュウ」という楽しい本があります。終戦後しばらく、毎年学校で便の検査がありました。虫卵が見つかると駆虫薬を飲まされ寄生虫を駆除したのです。体内でその寄生虫に戦いを挑んでいたのが免疫グロブリン(IgE抗体)という兵隊です。現代の日本人には寄生虫が殆どいなくなり手持ちぶたさのIgEが何の変哲もないダニや鶏卵やスギ花粉などの異種たんぱく質を攻撃するようになり車の排気ガスなどの化学廃棄物やストレスなどが重なってアレルギー反応を引き起こしアトピーや花粉症などの原因になったのです。今のところアトピーの妙薬はありませんがカイチュウのIgE抗体をヒントに画期的な治療薬が出来るかもしれません。あまりの痒さに「寄生虫を飲んでもいい」という人もいるようです(020515)
82)「奇妙な病気」アトピー(1)
肘や膝窩部、足背部、耳の後ろや腋窩部、首のしわの部分など肌同士が接する場所に好発し、肌が乾燥して痒みのある湿疹が増悪を繰り返す難治性の皮膚疾患がアトピー性皮膚炎です。ギリシャ語で「奇妙な病気」という意味のアトピーは近年スギ花粉と共に増加の一途をたどっています。両親の遺伝的素因もありますが妊娠中の母親が卵を取りすぎること、生後の赤ちゃんの離乳食として卵が多すぎることなどが原因のこともあります。母乳に含まれる卵の蛋白が大いに関係するのです。素因のある家系ではお母さんが妊娠中から生後8ヶ月くらいは卵を食べないのが最も良い治療法です。まして毎日食べるなどはもってのほか、わざわざアトピーをつくっているようなものです。(020615)
83)「奇妙な病気」アトピー(2)
アトピー性皮膚炎の治療の難しさは母親の存在です。アトピー性皮膚炎は難治性の病気ですからよい時期(寛解期)と悪い時期(増悪期)が繰り返されます。母親は見た目にかわいそうと躍起になっていろいろな民間療法に手を出して悪化させたり、幼稚園に厳しい食事制限を指示しておきながら、そのくせ自分で食べさせるお菓子やケーキには無関心?だったり。まず母親教育が必要です。そのため弱みにつけ込む悪徳商法(アトピービジネス)が蔓延し、あちこちで訴訟問題が起きています。ステロイドと聞くと悪魔の化身のように毛嫌いされるお母さんがいますがそれは思い違いです。増悪期間を短期間で寛解期にまで治せる薬剤としてステロイドはまさに最高の薬です。良い時期は保湿剤などで肌の手入を怠りなく。ステロイドに目くじらたてる母親ほど少し良くなるとほったらかしにしています。(020715)
84)ああ、川の流れのように(1)
何となく引っかかっていた中国の健康食品が大量に死者を出す大事件に発展してしまいました。もう13回忌を迎えたあの国民的大歌手Mも愛用していたとの噂のあったやせ薬。成分分析から毒薬が検出されたとの報道に寒気を感じました。中国4千年の歴史と誇らしげに宣伝されていても実証的には何ら安全性の確立はなくただ「安全だ」といわれたのを信じたがために健康を損ね命まで失うことになってしまうとは。医薬品ではないためにいわば無法地帯として多くの健康志願者を魅了してきましたが私が大学時代にラット胃癌の発癌実験に使っていたN-ニトロソ化合物が検出されたとの報道には愕然とした思いです。ニトロソ化合物は史上最強の実験発癌物質です。ごくごく微量で3ヶ月で必ず癌が出来ます(020807)