65)「2001年胃腸の旅」序曲
スタンリー・キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」が放映されたのが1967年。あれから33年が過ぎ、今まさに2001年を迎えました。宇宙では1977年ビートルズの曲を積んだボイジャー2号が太陽系を飛び出してはるか宇宙の果てまで知的生物(E.T)に拾われる期待を背負って飛び続けています。有人宇宙ステーションの建設も始まりました。医学に目を転じれば医学の進歩も予想をはるかに越えています。クローン技術の確立や臓器移植などは法律が追いつかないほどですし、サイボーグも現実化し、癌を征圧する薬(テロメラーゼ阻害物質)ももうすぐ見つかるかも知れません。夢はともかく現実をみ直し2001年は胃腸を中心に人体の旅へご案内致しましょう。(2001,01,15)
66)恐怖の副流煙
21世紀目前の昨年12月8日、友人k君を喉頭癌で亡くしました。そぼ降る冷たい雨の中で2年半の闘病生活の末に静かに52才の人生の幕を閉じました。彼の職業はスナック経営です。ひたすら地下に潜って毎夜お客の世話をしていました。彼自身は1本もたばこは吸いませんでしたが客の吸うタバコは副流煙として彼自身の喉頭を侵し続けとうとう喉頭癌になってしまいました。喉頭癌患者のほぼ100%が喫煙者です。彼は不幸にして自分では吸わないのに喫煙者以上に発癌物質を吸い込んでいたのです。声を失い気管をのどに露出してそれでも仕事のことを忘れず前向きに行きようとしたk君に心から合掌(01,02,15
67)舌は絶なり
食欲をそそるには視覚や嗅覚も大事ですが何と言っても味覚が重要です。@甘いA塩辛いB酸っぱいCにがい等を感じるのは味蕾と呼ばれる感覚器官です。味蕾は舌全体に分布していますがそれぞれ感じる場所が違い舌尖部と舌縁部では甘い、酸っぱいをまたにがみは舌根部で最も敏感である。舌での味わい方の参考にして下さい。又味覚は舌だけでなく咽頭粘膜や口腔粘膜全体でも味わうことが出来ます。それにしても2枚持っている人や、乾く暇もないほど次から次へ言い訳をする人など様々です。甘い恋をささやくのも舌のなせる技です。何かにつけ「絶(品)ですね」「不絶(品)ですね」が口癖のU君を思い出します。しみたり、潰瘍が治らなかったり、白反症になったりしたら即受診して下さい。舌癌もまた不絶です。(01,03,15)
68)食道は口から胃へのとおりゃんせ
食道は消化に関係なく食べ物がただ通過するだけの管です。様々な刺激が食堂粘膜に傷を付けて癌や食道炎を引き起こします。奈良県に何故食道癌が多いのか疫学調査して分かったことは毎朝食べる熱い茶粥が原因だったとか。ウオッカやテキーラなどまた韓国料理などの辛い食べ物は粘膜を傷つける原因になります。食道癌の症状は食べ物がつかえることです。症状が出たときには既に進行癌のことが多くやっかいです。やはり無症状のうちから定期検査(胃内視鏡検査)が重要になります。食道炎は悪性疾患ではありませんが耐え難い胸焼けに悩まされる人が増えています。最近よく効く薬が使用期限を限定しないで自由に使えるようになり食道炎患者の福音になっています。(01,04,15)
69)ピロリ菌が住んで候
胃は塩酸(強酸性消化液)によって食べ物を消化したり口から入ってくる雑菌を殺菌しています。そのため胃には生物は住めないと思われてきましたが何と1982年に胃の常在菌としてピロリ菌が発見されました。劣悪環境を生き抜くための智恵は自身でアンモニアを生成して身の回りを中和しているのです。このアンモニアは胃の粘膜には有害物質として働き、粘膜を傷つけて胃炎や潰瘍、そして癌の発生原因となります。ピロリ菌は成人日本人の85%以上に存在するといわれており(欧米人は20-30%)胃癌大国日本とピロリ菌の密接関係は否定できない事実となりました。しかし幸いにも昨年11月からピロリ菌の除菌治療が出来るようになり胃潰瘍、癌の根本治療としての期待が高まっています。(01,05,15)
clm(65-69)