小児精神科医佐々木正美師いわく「最近の子どもたちはままごとが下手になった。」
昔、ままごとの主役は母親役でした。子どもたちは普段見ている母親に理想の母親像を見いだし、遊びの中で疑似体験することになります。ところが、佐々木先生は「今では、母親役になると命令と指示ばかり」と、かなり辛口の指摘をしています。では、子どもたちは何の役をやりたがるのか?「赤ちゃんとペット」なのだそうです。そう言えば、幼児園でも「ばぶちゃん」「ペット」が人気のようです。
赤ちゃん、ペットというのは、可愛がられ愛される対象なのですね。実際の園生活の中では、年上の子が年下の子や赤ちゃんを可愛がりお世話をしたがる様子がたくさん見られます。でも、その反面自分自身もまだまだ可愛がられたい、愛されたいという願望も持っているわけです。それがおままごとというごっこ遊びの中で表れるのです。
子どもにとって甘えるということはとても大切な行動です。甘えることで自分を受け入れてもらえるかどうかを確認していると言えます。ですから、いっぱい甘え、十分に受け入れてもらえることを確認すれば、自ずと独立心が芽生えていくのですが、甘え足りなかったり、十分に受け入れてもらえないと、表面的にはしっかりしているように見えても、本当は不安を抱えたままなので、思春期や大人になってからその反動が出てしまうと言われているのです。
子どもたちは、甘えるのも「仕事」みたいなものなんですね。単にわがままを受け入れるべきだと言うのではありませんが、子どもの心に寄り添おうという努力を、私たち大人はしていかなければならないのです。
ちなみに、おままごとでお父さん役になると、ボーっと突っ立ったままの状態になることがあるそうです。帰りが遅かったり、子どもとの関わりが極端に少ないため、お父さんという役が何をしていいのかわからないからだそうです。中には寝っ転がって「ナイター見てるの。お母さん、ビール!」なんてシーンもあるとか。おもしろいですね。子どもはちゃんと見てるんですよ、私たち大人の背中を。