十日町市・中魚沼郡医師会便り
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@十日町市の特性について
十日町市は四方を山で囲まれ信濃川の河岸段丘地にあるわずかな平地に出来た小さな盆地にあります。北は小千谷市と接していて、雪峠を越えなければなりません。新潟県の地図を見ると一目瞭然ですが広大な新潟平野の南端は小千谷市で終わります。小千谷市の厚生連魚沼病院に17年間勤務して小千谷市と十日町市の違いを目の当たりにしました。小千谷市は長岡市と平地で隣接していて緊急時には救急車で15分足らずで長岡の総合病院に搬送することが出来ます。しかし十日町市はそうはいきません。ゆうに1時間以上はかかってしまいます。夏場はともかく冬は更に大変です。私自身もスリップ事故や信じられないことでしょうが雪崩に巻き込まれたことさえもあります。
また東の関越道(六日町)に抜けるには箱根より厳しい天下の険「八箇峠」が待ちかまえています。地元民は心得たもので車の整備、運転に万全を期しますが他県の商業車が関越道から日本海へ抜けるショートカット道路としてこの峠を利用するためことのほか交通量が多くそれも県外ナンバーの大型車が目立ち、彼らは冬の「八箇峠」の怖さを知らず整備不良のまま登坂するため事故が多発します。私の妻も私の知人も滑った車にぶつけられて恐怖を体験しています。西側の日本海側(柏崎、直江津方面)に抜けるにはかなり前に立派なトンネルが完成して大変便利になりましたが皮肉にもそちら方面には殆ど縁がありません。南は津南町と接してもう長野県栄村です。辛うじて信濃川(長野県では千曲川)に沿って狭い山道と隧道で結ばれていましたが長野オリンピック開催で、道はまっすぐ大幅に拡張され飯山市で高速道路につながり長野県方面は極めて便利になりました。(新潟県側はそのままです)かくのごとく他の地域と隔絶されて「どんづまり(妻有)地方」と呼ばれています。追い打ちをかけるように冬は名だたる豪雪地帯、「雪地獄、祖父の地なれば住み継げり」とはよくぞ言ってくれたものです。そんな苦難の時代を経て平成9年に待望の「ほくほく線」が開通して交通事情が一変しました。十日町駅から湯沢経由東京駅までジャスト2時間。学会も日帰り可能となり東京方面への学会、研究会には気軽に出席可能となりましたが、逆に新潟市方面への交通は大変な不便を強いられています。学会や同窓会への出席や医師会の会議、新潟大学への用事などには大変苦労している次第です。

A医師会活動について
研究会、勉強会関係では毎月第3火曜日に開かれる「十日町市中魚沼郡医師会、薬剤師会合同学術講演会」には六日町や小千谷市、松代、松之山からの参加もあり演題によってはパラメヂカルにも案内を出し大勢の参加者を得て盛会です。我が医師会は毎月の例会がなくこの講演会後の懇親会が貴重な情報の場となっています。特に日頃話す機会の少ない薬剤師さん達も参加してくれて楽しみです。ただ講師の依頼については東京からの交通は大変便利ですが新潟からの交通の便が悪く講演会後の懇親会に間に合わなくなってしまうこともしばしばで新潟からの講師の先生方にはご苦労をおかけして申し訳なく思っております。かくのごとく新潟市から遠く離れた妻有地方は辺境の地にあり県立十日町病院の医師もなかなか固定せず厚生連中条病院も精神科以外は苦戦しております。この2病院には1市2町1村7万人の命が託されております。より一層の充実こそ住民と我々医師会員すべての願いであります。

B十日町市中魚沼郡医師会新体制について
2年間医師会長を務められた庭野行雄Dr.(庭野小児科医院開業)に代わって副会長の山口浩太郎Dr.(山口内科医院開業)が会長に、副会長には大熊達義Dr.(大熊内科医院開業)が就任されました。理事は上村晃一Dr.(上村病院院長)介護保険対策担当理事、高橋修一Dr.(本町クリニック開業)広報担当理事、池田透Dr. (池田内科医院開業)産業医会担当理事、丸山俊行Dr.(県立十日町病院整形外科部長)学術担当理事、田中陽一Dr.(田中外科医院開業)地域保健対策担当理事の5人です。庭野行雄前会長の退任の挨拶の中に「幸い自分の任期中に一人も葬式を出さずに済んだ」とありました。会員一同2年間無事に乗り切れたのは何よりでした。(前々会長は何と3回も葬儀委員長を務められました。)新規開業は富田浩Dr.(富田外科医院開業)石川威Dr.(石川医院開業)関真人Dr.(関整形外科医院開業)の3名です。医師会員は総勢44名と少数ですが行政との連携もスムーズで地域医療に全員が総力をあげて取り組んでいます。当面十日町市中魚沼郡が抱える大問題は県立病院の存続にかかわる救急医療体制です。前述したように十日町地方から特に心臓・循環器の急患が出た場合、長岡に搬入せざるを得ず一刻の猶予もない状況の中で辺境地の悲哀をこうむっています。何とか峠を越えなくても地元十日町市で良い医療が受けられる体制を是非つくっていただきたいと思います。それでなくても過疎が進む一方の地方を切り捨て統廃合するような暴挙は避けていただきたいと思います。合併話が持ち上がっていますが単なるうわさで終わってくれることを乞い願うばかりです。 広報担当理事(平成14年7月号)