211)続・宇宙人の科学 |
認知症とは脳神経細胞が病的に破壊され、一度獲得した知的能力が著しく低下した状態をいいます。Aアルツハイマー型認知症は脳で情報を伝達する神経物質のアセチルコリンを分泌する脳神経細胞が壊され記憶や認知機能が低下する病気です。普通では作られないベータアミロイドと呼ばれる品質不良たんぱく質が細胞内に蓄積して老人斑を作りやがて脳細胞死に至ります。Bレビー小体型認知症とはやはり脳細胞内に作られたレビー小体という物質によって脳神経細胞が破壊されて死滅する病気です。大脳皮質に多発性に見られるのでびまん性レビー小体病とも。この疾患特有の症状としては幻覚や妄想があります。やがてアルツハイマー型認知症のような認知障害とパーキンソン病様の運動障害の両方が出現しアルツハイマー型認知症に比べ10倍も早く進行して寝たきりになります。さて我々はどう生きたらよいのでしょうか。人間は考える葦であるため老いを怖れ死を畏れて考え苦しんでいます。そんな人間に対して神様が与えてくれた死への苦しみから逃れられる贈り物が「ボケ」であるとの説もあります。(130315)
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212)PM2.5の恐怖
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長い冬も終わり待ちに待った春の訪れ。空気は清涼で青空を見ると気持ちが晴れ晴れして空が青くて本当によかったと思います。空が黒かったり赤かったりしたらどんなに気持ち悪いことでしょう。春の空気を深呼吸して胸一杯吸い込みたいところですが最近中国から黄砂とともに飛来するPM2,5なる超微粒子が気になります。極小の有害物質が肺の最深部に到達してCOPD(慢性呼吸不全)や肺がんを誘発します。非常に危険な汚染物質で大気汚染の元凶物質です。肺から血液内に吸収されるため心臓、脳疾患なども増加しており中国では大気汚染の影響による健康被害が深刻です。北京市などの大都市では工場や車の排気ガスによる有毒物質を含むスモッグが日中も重く低く立ちこめ鼻をつく異様なにおいや目やのどの痛み、頭痛に悩まされています。なんと1日にたばこ21本を吸っているのと同じ状態とのことです。たばこなら吸わなければよいのですが空気は吸わないわけにはいきません。以下次号(130420)
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213)COPD(慢性閉塞性肺疾患) |
PM2.5の恐怖については前号で書きましたが北京の大気汚染の被害は「1日にたばこ21本を強制的に吸わされているのと同じ状態」とのこと。PMとは有害微粒子の大きさの単位のことであり2.5は花粉などと比較にならないくらいに小さな物質で肺の最深部に容易に達します。肺はブドウの房のようになった極小の風船の集まり(肺胞)で血液と接して酸素と二酸化炭素のガス交換をしています。その風船が次々につぶされてしまうとガス交換が出来なくなりいくら酸素があっても体内に取り込むことが出来なくなります。せき、たん、息切れが主症状で次第に酸素が充分吸えない慢性的窒息状態になってきて空気中の酸素濃度では呼吸困難になるため常に高濃度酸素を吸っていなければならず24時間酸素ボンベを手放せなくなります。この状態をCOPDといいます。昔はトンネル掘りなどの職人の塵肺(じんぱい)が有名ですが最近はたばこによるCOPDが殆どを閉めています(95%)。70才を過ぎると高率に発症しその後のQOL(生活の質)を著しく低下させます。COPDはたばこの生活習慣病ともいわれており死よりも恐ろしい病気として知られています。絶対なりたくない病気のひとつです。(130515) |
214)腰痛の科学 |
「こんなに痛いのに整形外科へ行ったらレントゲン撮ってどこも異常ないよと言われた」と憤慨してる患者さんがいます。日本整形外科学会の治療指針によると腰痛には画像診断(XP、CT、MRI)で椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、変形性脊椎症などの病名がつけられていますが実は原因が特定できる腰痛はわずか15%以下といわれています。つまり85%以上の腰痛は原因が特定できないのです。ぎっくり腰(咳やくしゃみ、中腰などで起こる急性腰痛)や筋肉疲労、そして多くはストレスなどの心理社会的要因などが大きな原因であろうといわれています。全く腰痛のない人の3割にヘルニアがあり逆に腰痛を訴えていても50%以上の人には画像上異常がないという報告もあります。腰痛はごくありふれた症状ながら実はよくわかっていないのです。腰痛を訴える人にレントゲンをとって「だから状態が悪いのだ」と思い込ませるのはストレスだけ増えて逆効果です。ぎっくり腰は要安静ですがその他の慢性腰痛に安静(体重増加になり易い)は有効ではありません。日常生活を維持しながら運動療法を試み、痛み止めの注射や薬を使い場合によっては抗ストレス薬なども含めた精神的治療も受けながら気長に大らかに腰痛と付き合うことが肝要です。(130615)
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215)乳癌について |
ハリウッドの大女優アンジェリーナジョリーさんが遺伝子検査で87%の乳癌発症リスクがあるため予防的乳房切除術を受けたと報道されました。予防的切除の是非はともかく乳癌予防の新しい方法が示されたことは画期的です。しかし日本では遺伝子検査も予防的手術も保健適応とならず自費になるため数百万単位の費用がかかります。日本的には世界に誇る集団健診制度が確立しており早期発見、早期治療による癌死亡率の低下を目指していますが残念なことに受診率が低く充分機能していません。さて乳癌の90%以上は自覚症状があり唯一自分で発見できる癌でもあります。常日頃から自己検診に努め@硬いしこりAえくぼのような引きつれB血性乳汁などに注意して下さい。男性乳癌もまれにみられます。つい先日も30代の男性が乳頭から血が出ると来院しました。細胞診で癌細胞を確認して病院へ紹介しました。早期乳癌で手術して完治。私は今までに6例の男性乳癌を診断、5例を手術しましたがいずれも早期発見で完全治癒しています。折に触れておっぱいに触れて下さい。(130715)
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