201)笑いの効用
「笑う門には福来る」とはすばらしいことわざです。人体は体の状態を常に一定に保とうとする調節機能を備えていてこれをホメオスタシス(恒常性)と呼びますが内分泌系、神経系、免疫系がバランスを取り合っています。大きなストレスがたまるこのとこのバランスが崩れて免疫力が落ちて種々の病気の原因になります。このとき心の底から「わっはっは」と笑うと脳の思考が一時停止してストレスから解放されその結果ストレスで崩れた「恒常性」のバランスが元に戻りやすくなり、体調の乱れが改善されます。これを脳内リセットと呼びます。実験でもリュウマチを悪化させる因子が落語を聞いて笑った後では劇的に減って痛みが軽減したという報告があります。脳内リセットは笑いだけでなく、涙を流して泣いた時や大声をだしてカラオケで歌ったりした時にも見られます。くよくよ、じくじくしていても「わっはっは」と楽しく過ごしても同じ1日24時間です。健康のためにも充実した日々のためにも大いに笑って過ごしましょう。(120515)
202)人は当たり前に生まれ
古今東西の英雄たちが探し求めて止まぬもの、それが不老不死の妙薬です。エジプトのミイラは将来医学が発達したときの肉体保存といわれ、秦の始皇帝は不老不死の妙薬を求めて徐福を日本に送りました。「不死の山」が「富士山」になったとも。さて人工心臓や各種の臓器交換は出来ても脳のスペアはありません。日本の最高齢は泉重千代さん120才、世界ではフランス女性、ジャンヌカルマンさん122才。約120才が限界のようです。人は本来、ごくあたり前に生まれ、成長し、年を取り、病気になり、そして死んでいきます。このあたり前のことを脳がコントロールして健康を保持しています。脳の健康の基本はストレスをためないことです。最近高齢化社会になって元気のいいお年寄りが増えたせいかあたり前の加齢による心身の老化を病気だと思っている人がいます。「何故、どうして」「去年はこうじゃなかった」と老いを病気のせいにしたがる症候群です。老化は治りませんが病気なら治ると思っているのです。それが脳のストレスとなり結果として老化を助長しています。老いはあたり前にやってきます。くよくよ悩まないでわっはっはと笑って一日を健やかに過ごしましょう。(120615)
203)クマのふんどし
寄生虫は以前は多くの日本人に寄生していましたが最近では衛生事情の改善により殆ど姿を消してしまいました。しかし今でもたまに見られる寄生虫が@アニサキスA横川吸虫B広節裂頭条虫Cギョウ虫です。先日30代の患者さんがお尻から長い紐状のものが出てきたと現物を持ってきました。まさしく「こうせつれっとうじょうちゅう」(サナダ虫)でした。寄生虫症は東南アジアの旅行者に多いので話を聞くがどこにも行ってないとのこと。さて国内ではサナダ虫はサケ・マスが中間宿主として知られており北海道のヒグマがサケ・マスを食べて尻からサナダ虫をぶら下げて歩いていることがあり「クマのふんどし」と呼ばれています。東北、北海道、北陸に感染者が多いのですが流通網の発達で今では全国に広がりスーパーのサケ・マスの刺身から感染者が増えています。埼玉の女子高校生が肛門からひもが出てきたが恥ずかしくて誰にも言えず自分で引っ張り出していましたがマラソン大会中にサナダ虫が肛門から出てきてぶら下がり失神した例もあります。長いと10メートルにもなります。一日10センチも成長するので宿主の栄養を大量に消費してくれて「やせ薬」には最適とか。(120816)
204)ロンドンは燃えているか Ist London Verbrennen?
この夏はロンドンがオリンピックで熱く燃えている。努力努力で鍛え抜かれた技と極限まで高めた集中力を兼ね備えた者だけが手にする栄光の金メダル。各選手たちの真摯な姿に感極まる場面もしばしば。。さて運動は動物(動く者)たる人間の生存の基本です。頭痛、腰痛、高血圧、糖尿病、脂質異常症などは適度の運動によってすっきりと改善されます。特に生活習慣病の原因になるメタボの人は@食事療法とA運動療法が欠かせません。効率よい運動は1日30分から60分のウォーキング(1時間6km以下)です。時速6km以上がジョギングですが速く走るほど膝、腰、心肺などへの負担が大きくなり中高年者にはウォーキングの方が無難です。10分づつ積み重ねての合計タイムでもOK、これでちゃんとダイエットが出来ます。筋トレはバーベルを持ち上げなくても低い踏み台を1日250回往復するだけで足腰の衰えを防ぐ大事な大腰筋を鍛えることが出来ます。つまづいて転ぶのはこの筋力の低下が原因です。運動しないと→骨格筋が弱るから→運動しない→病気になる→更に運動しない。この悪循環にならないようにオリンピックを観戦しながらよーし今日からウォーキング、踏み台往復筋トレを始めましょう。(2012,8,7)
205真珠の耳飾りの少女
「北のモナリザ」フェルメールの最高傑作「真珠の耳飾りの少女」が東京都美術館で展覧中。例によって炎天下の中、長蛇の列に並んで待つこと1時間。ごった返す館内に目指す絵はあった。何回もプリントで見慣れた絵であまり感慨もないがただ本物なので絵の大きさと額縁だけは脳裏に焼き付けた。とにかく人人人でごった返していたが中に車椅子の男性が混じっていた。16年前家族でパリ旅行をしたときのこと。ルーブルでもオルセーでもベルサイユ宮殿でも身障者には別の入り口があって最優先で見学できた。それを見て「さすがパリ」と感心したものだ。然るに今回は会場の係員さえも見て見ぬふり、周囲の人も全く気にとめず我先にと絵の前にしゃしゃり出ていく。見かねて「すみません。ちょっと」と声をかけて隙間を作ってもらい「北のモナリザ」を見てもらった。ご本人は「すみません」と盛んに恐縮していたがこんな時に福祉国家日本の本質を垣間見る。福祉福祉と大見得を切っているが福祉はお金ではない、教育だとつくづく思った。幼稚園から大学まで一貫して弱者に対するいたわりの心をはぐくむ教育こそ真の福祉国家への道ではないか。妻がスペインのプラド美術館で見た光景は有名なピカソの「ゲルニカ」の前に座った幼稚園生に学芸員が熱心に絵の説明をしている姿。これもすごい。日本にもこんな教育もあっていいと思う。(120918)